スペシャル座談会

歯科医院の快適空間を考える

ジョイントセンターに歯科医院のデザインを依頼してくださった山﨑長郎先生、大河雅之先生と、インテリアデザイナーとして、多くの商業施設・住宅・病院・歯科医院・クリニックなどのデザイン・設計に携わってきたジョイントセンター原両名が、歯科医院の快適空間について語ります。

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山﨑 長郎(やまざき まさお)
長野県出身。東京歯科大学卒業。原宿デンタルオフィス院長・SJCDインターナショナル会長・東京SJCD最高顧問。

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大河 雅之(おおかわ まさゆき)
岩手県出身。東北歯科大学卒業。代官山アドレス歯科クリニック院長。東京SJCD理事・インストラクター。

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原 兆英(はら ちょうえい)
東京都出身。ジョイントセンター(株)代表取締役。商環境デザイン賞優秀賞、2002年・2005年グッドデザイン賞、その他多数受賞。

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原 成光(はら しげみつ)
東京都出身。ジョイントセンター(株)常務取締役。日本インテリアデザイン賞、ディスプレイ産業大賞優秀賞、その他多数受賞。

患者さんと先生、双方のより良い信頼関係を生む患者の気持ちを大切にした空間づくりが大切

山﨑 今年オフィスを引越しすることになり、原さんにお願いしました。実は、14年前にオフィスの改装をお願いしたことがあり、原さんの事務所のやり方を知っていたので、諸条件の打ち合わせのみでデザインはほぼ全てお任せしました。大方の歯科医院がそうなのですが、今までの歯科医院設計の典型的なパターンは、まず歯科機材会社が主な機材の位置を決め、その後に下請けの設計者が設計を行うというやり方です。設計料は歯科機材会社の材料費に込みで含まれ、設計料は独立して計上されていません。私の歯科医院も以前はこうしたやり方で設計してもらいました。

原さんにお願いした理由は、セミプロでなくプロにお願いしたかったからです。インテリアデザイナーは自分の好きなデザインで思うがとおりに作ってしまうことがままありますが、原さんの事務所、ジョイントセンターさんは全く違います。大変ていねいに要望を聞いてくれる。施主である歯科医が何を考えているのか、きちんと話を聞いてくれるんですよ。初めて依頼した時は30回くらい打ち合わせがあり、途中で面倒くさくなったほどですが、結果、大変居心地のよいオフィスになりました。これからは歯科医院の設計もプロに任せるべきだと痛感しました。以来、他の歯科医院の院長には「プロに頼め」といっているんです。

プロであるインテリアデザイナーから見ると、一般的な歯科医院というのはどんなものなのでしょうか。また、実際に設計に携わったときには、いったいどんなことを感じられたのでしょうか、そのあたりからお話をお聞きしてみたいです。

原(兆) 没個性的なデザインが多いということはもちろんですが、個性的でありながら、ご自身の趣味で建物やインテリアをつくってしまっているケースも見受けられます。「グリーンで統一しました」なんていって、満足なさっているわけですが、必ずしもグリーンが患者さんの気持ちを落ち着かせるから使っているわけではない。患者さんのためではなく、自分たちの満足のために医療側の優先でつくっているのではないかと。

図解色の例と形の例

次のような分析結果があります。人間の感情に与えるもの、五感の情報収集能力比率というデータで、もっとも強く訴えるものは「視覚」です。五感を総合したときに、人間が感ずることを100%とすると、視覚でとらえるものが全体の87%にも達するといわれています。聴覚の影響はぐっと下がって7%、嗅覚は3.5%、触覚は1.5%、味覚は1%になります。つまり、人間が外界から視覚を使って取り込む情報は、確実に人間の心理を変えてしまいます。デザインというと、たんなる「かたち」の問題と思われるかもしれませんが、それだけにはとどまりません。視覚からの印象は圧倒的なのです。

原(兆) 視覚の影響だけではありません。例えば、診療室の音がガンガンと待合室に聞こえてくる。しかも、響くなんてことすらありました。歯科医院の待合室にいる患者さんには、どんな治療になるのか、 痛いのではないかなど、もともと不安な気分があるものなのです。そのうえ、治療中の金属音が待合室に響くというと、少なくとも安らかな気持ちではいられないでしょう。小さなお子さんはどうでしょう。恐怖感でいっぱいになてしまうかもしれない。それをいかに解消するか。私たちは「患者さんと先生、双方のより良い信頼関係が生まれればいい」と思っています。私たちの仕事は、そのための空間づくりなのです。

デザインの工夫や素材の使い方で、治療中の不快な物音が待合室に流れ込みにくい待合室をつくることもできるのです。私たちは「医院が治療の場だけでなく、もっと患者の気持ちを大切にする仕事をしたい」と感じました。

原(成) 歯科医師としての必要最低限の機能は、開業する以上はもちろん十分にそろっているでしょう。あとは患者さんの気持ちへのメインテナンスなんだと思います。治療前の不安な気持ちが、歯科医院に着くとますます深まってしまうようでは困るわけです。患者さんの気持ちを追い詰め、歯科医院に閉じ込められたような気持ちにさせてしまうのは、大変残念なことですから。今まで多くのクリニックをデザインしてきましたが、とくに繊細な女性に喜ばれています。ということは、安心して歯科医院に通っていただいているということだと思っています。

山﨑 そうでしょうね。実際、働いている側からしても非常に気持ちがいいですから。患者さんへの配慮という点でも、デザインでの差別化は重要な要素になってきているんですよ。

原宿デンタルオフィス

院長 山﨑長郎

東京都渋谷区渋谷2‐1‐12
パシフィックスクエアビル 4F
http://www.harajyuku-dental.com/

温かみのある非日常的空間を

大河 私は以前、郊外で開業していて、そこでは歯科医院の差別化はそれほど問題ではなかったのですが、都心で開業してみますと、歯科医院の過当競争が激しく、患者さんの取り合いになってきています。そんな中で、歯科医院として個性をいかに出していくか、他の医院とどう差別化していくかということが、たしかに重要になってきていると思います。都心の患者さんは、医院の近所に住んでいるわけではない人も多く、その医院で治療をするということに価値を見出してきてくださっていると思うんです。

原(兆) 歯科医院を取り巻く環境が変わってきていることが大きいのだと思います。今までは、歯科医院ごとに、その医院のドクターの仕事がやりやすいように機能面を考慮して、その上で私たちの考え方を盛り込んでいくことでうまくいってきました。しかし、これからは、治療だけの目的でなく、予防のためにチョコッと寄る、そういう患者さんも取り込んでいきたいわけでしょう?美容院やエステにいく感覚で歯科医院に寄ってもらいたいですね。

大河 都心型の生活では、クオリティ・オブ・ライフを高めるということに重点が移っていますから、歯科医療でも求められるのは、自分の人生をよりよく過ごすためのプラスアルファの医療ですよね。いまや、治療に訪れる患者さんより、メインテナンスの患者さんの方が多いのが、都心型歯科医院の姿になっています。

原(兆) 機能はもちろん必要です。しかしこれからは、患者さんを迎える気持ちをいかにして「かたち」であらわすか、ホスピタリティを表現するかです。歓待するような気持ちを伝えられればと思うんですね。デザインするときには、その気持ちをどこまで持っているのかについて、ドクターと相談し確認して打ち合わせるのです。医療的な雰囲気から脱却して、センスのいい感性を感じるものを表現したいのです。

結果として、女性の患者さんが増えたといわれます。どういう空間に身をおくかということが、患者さんの快・不快にたいへん強く影響するのです。
ですから最近では、歯科医院のデザインには、”住宅のような温かみ”と”非日常的”を融和させ、ニュートラルな空間をつくっています。患者さんがリラックスできるような空間が大切なのです。

原(成) 患者さんにいかにゆったりした開放的な空間を感じてもらうか。そのためにさまざまな視覚的効果をねらっています。気持ちが良い空間をつくれば、どんな人にも喜んでもらえるはずです。

大河 歯科医療といえどもサービス業でしょう?歯科医療は最高のサービス業だと思います。生活を豊かにしていきたいという方は、自分の大切な時間とお金をさいて歯科医院にかかるわけですから、そうした患者さんを迎え入れることができる姿勢を、歯科医院側も準備したいと思います。

代官山アドレス歯科クリニック

院長 大河 雅之

東京都渋谷区代官山町17番‐1
代官山アドレス ザ・タワー 301
http://www.daikanyama-dental.com/

長く愛される歯科医院を目指して

原(兆) ドクターという社会的な立場は昔も今も尊敬されているものですが、現代ではそれが信頼感とイコールではないように思います。患者さんは自分の身を預ける診療を受けています。話し方や身のこなしなど、ドクターの一挙手一投足が気になるものです。そして空間も患者さんに大きな心理的影響をおよぼしています。だからこそ、信頼が生むものは治療時の安心感だけでなく、結果として長く愛される歯科医院(クリニック)経営にもつながるものだと考えています。

オーバードクター時代が歯科医院間の競争を激しくしているのは確かです。でも本当の意味で患者さんの立場に思いを傾ければ、リニューアルによるイメージアップが課題の解決にはとても有効な方法になるでしょう。

クリニックの「違い」を空間デザインで創りあげる。

都心型診療形態と地方型診療形態への二極化が進行しています。デザインセンスがクリニック経営に求められる時代。私たちは、患者さんに支持され、愛されるインテリアデザインを通して、ドクターの「センス」と「技術」を表現する信頼のクリニック空間を創ります。開業や改築・リニューアルをお考えの節はお気軽にご相談ください。


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