臨床座談 楽しく語ろうクリニカル&マテリアル 40 (ジーシー・サークル 130号 2009-8より)

ゲスト
山﨑長郎先生 Masao YAMAZAKI
1945年生まれ
東京都渋谷区開業「原宿デンタルオフィス」

ゲスト
原 兆英先生 Choei HARA
1942年生まれ
東京都港区「ジョイントセンター株式会社」代表取締役

司会
中川孝男先生 Takao NAKAGAWA
1958年生まれ
東京都港区開業「中川歯科クリニック」

ジーシー
高田光明 Mitsuaki TAKADA
1966年生まれ
株式会社ジーシー機械開発部部長

 

–オフィスデザインと「レフィーノ」–

日本人の精神性の中にある心地よさ。
ジーシーは、それを -Japan Sensitive-というコンセプトで昨年の「日本デンタルショー 2008」で発表しました。その”上質な診療空間”への提案は、これからの診療のあり方、診療空間の考え方として高い評価をいただきました。
この度、その空間の中心をなす新しいコンセプトのユニット「レフィーノ」が発売の運びとなりました。
そこで今回は、これからの診療空間をテーマに、日本の歯科医療をリードする渋谷区ご開業の山﨑長郎先生と、歯科医院のオフィスデザインで活躍される原 兆英先生をお迎えして、これからの歯科医院のあるべき姿についてのお話を伺いました。


写真左から、山崎氏・原氏・中川氏・高田氏

 

『日本デンタルショー 2008』でのジーシーの提案

中川 高齢化、少子化、う触の減少、そして過剰ともいわれる歯科医院数などから歯科界の危機とまで叫ばれる昨今です。そのようななかで、これからの歯科を考えていくと歯科医院のあり方そのものも見直す時期でもあるのかなと思います。そんな折、昨年 11月の『日本デンタルショー 2008』で、患者さんをお迎えする新しいおもてなしの心”診療空間 -Japan Sensitive-“を提案されました。そこで今回は、これからの歯科医院のあり方を考えるということで、診療空間をテーマに座談を進めます。
ゲストは原宿デンタルオフィス院長で東京 SJCD最高顧問の山﨑長郎先生と、デンタルクリニックの空間デザインにおいても第一人者であるジョイントセンター株式会社の原 兆英代表取締役です。山﨑先生は 2年前にクリニックを新築、移転される際に、原先生にクリニックのデザインを託されています。また、ジーシーが 7月に発表した新しいデンタルユニット「レフィーノ」の開発アドバイザーでもあります。
原先生には、日本デンタルショーでジーシーが提案した -Japan Sensitive-の空間デザインを手がけていただきました。

山﨑 実は、原さんには移転前のオフィスも含めて 2回デザインをしてもらっています。前のオフィスはとても気に入っていて、一生このままいこうと考えていたくらい好きだったのですが、ビルの建て替えでどうしても移転せざるを得なくなってしまいました。あのオフィスが私の原点だと思います。
ところで、日本デンタルショーでジーシーが提案した空間とユニットの評判はどうでしたか。

 


図1 ジーシーがお贈りする、上質な空間デザインコンセプトのキーワードは 3つ。
患者さんを大切なゲストとして、お迎えする。おもてなしの気持ちをアピールできること、ホスピタリティ。


図2 ゲストである患者さんにゆったりとした安らぎを感じていただき、また来たいと思えるデザインや空間で あること、ホープフル。


図3 診療空間でありながら、緊張を緩和し癒しを感じるデザインであること、ヒーリング。

 

高田 今回発売した「レフィーノ」とケア用のチェアを置いて原先生に空間デザインをお願いしました。患者さんの満足を得られる新しいユニットと上質空間をご提案するということで、”おもてなしの心”を-Japan Sensitive-というデザインコンセプトで展開していただきました。
ユニットは参考出品だったためアピールできませんでしたが、多くの先生方に何度も足を運んでいただき、「素敵なユニット展示だね」とか、「ユニットの発売を待っているよ!」とお声を掛けていただいた時はとても嬉しかったですね。お陰様で、ユニットへの関心も非常に高いものを感じました。

 


図4 通常のユニット展示ブースと異なり入口ホールを設置。
ホールは「おもてなし」する間であり展示空間全体の “顔”として品格を一目で伝える役割もある。


図5 チェアは一人掛けで低いものを。視線を低くすることで落ち着きと、空間に広がりがでてくる。


図6 キャビネットには桐を使用。桐は抗菌作用など機能的にも優れているが、品のある温かみや優しさも感じられる。
利点を損なわないようシンプルにデザインした。

 

中川 デンタルショーでは、かなりのインパクトがありましたね。今までになかったユニット展示だったと思います。その -Japan Sensitive-というコンセプトとは、どのようなものだったのですか? もう少し詳しく教えてください。

高田 今回の「レフィーノ」の開発は、”患者さんには心地よく治療をお受けいただける、先生や歯科衛生士さんには快適にご診療が行える”という設計方針を立て、さまざまな機能に対し、”上質”をテーマに開発に着手しました。ネーミングもスペイン語で”上質な”という意味の「レフィーノ」とし、その表現には数社のデザイン会社でコンペを行いました。近年の歯科診療は、 “Cureから Careへ”という臨床の流れなど予防に重点お約束をして気持ちよくお帰りいただく。そんなこれからの診療パターンをイメージして”患者さんが通院したくなるような診療空間やユニット”をトータルにご提案したい、日本デンタルショーでぜひご紹介したいと考え、その思いを原先生へお伝えしました。

 そうですね。このお話を伺い、何度も打合せを行って、中尾社長やジーシーさんがこれからの歯科医療のために、どのようなことをご提案したいのかがよくわかりました。私も大変共感し、その診療空間の創造にあたって、日本の精神性のなかにある「迎」(Hospitality)、「悠」(Hopeful)、「癒」(Healing)という 3つのキーワードを基に、 -Japan Sensitive-というデザインコンセプトとして日本デンタルショーで具現化したわけです。あの空間は、「レフィーノ」の開発の狙いをそのまま拡張し、引き立てるとともに、ゲストである患者さんが癒される空間としてデザインしました。今までのジーシーさんとは違う、新しいメッセージを訴えた表現だったのです。

中川 なるほど。確かに原先生のお話にあったように安らぐ空間でしたね。そして、「レフィーノ」もよくマッチしていた。その空間づくりにはどんな工夫があったのですか?

 少し具体的にデザインについてご解説しますと、ゲストである患者さんをお迎えするエントランスには、広いスペースと奥行きのあるフロア、お座りいただくレセプションエリアのチェアは、一人一人の患者さんを大切にしていることが分かるように一人掛けで低いものを選びました。視線を低くすることで落ち着きと空間の広がりが出てきます。床や壁、ユニットは優しい空間を作り出す色調、淡いキャラメル系のトーンであわせることでさらに温かさをかもし出し、抗菌作用のある日本伝統の木材である桐を壁に使い、診療に携わるすべての方々の衛生面に配慮しています。また、眼にも優しい柔らかい間接照明を採用し、天井からは鳥のさえずりを、足元からは小川のせせらぎを、そしてほのかに香るアロマセラピーなど。この診療空間は、治療の場という今までの概念から、癒しの場という新しい医療の形を提案しているのです。

山﨑 それはジーシーとしては大きなインパクトだったね。それまでジーシーはデザイン的にはいまひとつで、おもにユニットの機能をアピールしてきたから。

 


図7 入口ホールの左右にユニットを展示。光のグラデーション、
色や素材の統一、木目の貼り方まで細かくデザインし優しく上品な空間に仕上げた。

 

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